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切符は正しく目的地まで買いましょう

 仕事柄、東北新幹線を利用して仙台に出張することが多い。仙台駅から戻る時は東京駅まで新幹線を利用して、そこから会社のある横浜まで東海道線に乗り換える。

 これに関連する首都圏の路線図を下図に示す。 


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 かねてから謎だったことがある。それはこの乗車運賃がどうも毎回一定でないことであった。仙台駅では新幹線の切符をいつも窓口ではなく、機械で購入するので乗車券の横浜駅の名前を入力するのが面倒である。だから急いでいる時などはとりあえず東京駅までで購入しておき、実際には横浜で降りるときに清算しようとする。きっとそれが運賃が毎回同じにならない理由であろうことは察しがついていた。

 あらためて調べてみると、どうも特定都区市内規定というのが、その秘密を握っていることが分かった。

■特定都区市内規定(JR旅客営業取扱基準規程86条、87条)

「特定都区市内にある駅」から「その特定都区市内の中心駅から200kmを超える鉄道区間内にある駅」までの運賃計算に用いる営業キロ(または運賃計算キロ)の起点(または終点)を当該中心駅とみなす。

 これは歴史的には大都市における改札業務を簡素化するために設けられたものである。平たく言うと仙台のような遠いところから東京に来る場合は23区内にある駅までの運賃は全部一律にしてしまおうというものである。

 特定都区市内として規定されているのは、全国に11都市ある。その中でも今回の議論に関係してくるのは東京都区内横浜市の2つである。この二つエリアは上の図に示したように隣接している。それが事情をさらに複雑なものにしている。

 中心の駅をベースに考えるということなので、上の図を見るように東京都区内ならば東京駅、横浜市内ならば横浜駅を選び、仙台からそこまで距離から運賃を算出する。そしてその料金をこのエリア内のすべての駅に一律に適用するのである。すると当然、エリア内で仙台からみて遠い場所にある駅はお得で、逆に近い駅はなんとなく損をしたような気分になるのが人情というものだろう。例えば、東京都区内ならば南北の端にある赤羽駅蒲田駅は30kmも離れているのに同じ運賃になるからである。仙台から見たら350km程度も離れているのだからどちらも同じ程度と考えてもいいだろう。それがこの料金体系の論拠ではあるのだが。

 でも例えば川崎駅は横浜市内エリアの東京よりの端にある。となりの蒲田駅までは東京駅と同じ料金でこれるのに、一駅を越しただけで横浜駅までの運賃になるのはおかしい、と思うかもしれない。実際に二通りの運賃を計算してみると、

 ①仙台から横浜市内エリアまでの均一運賃を払う・・・¥6,480

 ②仙台から東京都区内エリアの均一運賃を払って蒲田駅まで行く。
  そして蒲田駅から一駅区間分だけ追加で支払う・・・¥6,100

 と約400円近い差が生じる。さてこの事情をエリアを広げてグラフとして示す。

 

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  目的地までの運賃を払った場合を赤丸、そこから追加で運賃を払った場合を黒丸で示している。またいくつかの駅からのそれぞれの追加運賃を加えた額をグラフで表している。この絵のとおり、東京都区内の切符を買って一番遠くまでいける駅である蒲田駅から追加料金を払うのが一番割安になることが分かる。

 

 さて、この方法で横浜まで行ってみると計算上は300円ほど割安になるはずであった。実際に横浜駅で乗り越しの清算を精算機でやってみると機械に表示された質問に慄然とした。

「あなたの乗り越し区間蒲田駅から横浜駅でいいですか?よければ『はい』のボタンを押してください。そうでないならば駅員にコンタクトしてください。」 

 ひっかけ問題のように知っているくせに聞いてくることに不安を感じた。確かにこちらとしては蒲田駅とは縁もゆかりもない。元々蒲田駅になんの用事があったか?にこたえられない。なぜ乗り越しすることになったのか?に対しても同様である。そういわれて考えると経路探索のツールを使ってもこういう方法が最安値で検索できたこともない。またそういえば窓口で「切符は正しく目的地まで買いましょう」というポスターも見たことがある。そんなことを考えているうちに機械の前で動けなくなり、呆然と立ち尽くしたのであった。

 

 この記事はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。