メビウスの箱の原理とは、
▮メビウスの箱の原理
メビウス(タバコ)の箱のように3つの慣性主軸に対する3つの慣性モーメントが異なる剛体の回転においては、最大、最小の慣性モーメントとなる主軸を中心とした回転は安定しているのに対して中央の慣性モーメントとなる主軸の回転は不安定となる。
というものであり、オイラー方程式を用いた証明を下記の記事で紹介した。
ここでは微分方程式を用いずにもう少し直観的に証明することを考える。そのために回転エネルギーの保存則、そして角運動量の保存則の2つを用いる。
まず、剛体の回転の運動エネルギーEと角運動量Lの絶対値の2乗は、
で与えられ、外力がない場合これらは一定の値となる。整理すると、
この2つの式から、ω1~ω3を消去すると、
となる。ここでM1~M3の大小関係である、
を用いると、適当な正の定数C1, C2, C3をとることで上式は、
と整理される。これらの式の形からも主軸2に対する挙動が他の2式とは異なることがわかる。
まず、主軸1(ω1)を中心とした回転である、
であり、振動解となる。ω2, ω3は小さな値からスタートするがω2が増大してもω3が減少する形となりω2、ω3は初期値で決まるある上限値を超えることがない。つまり主軸1を中心とした回転は安定している。この挙動は主軸3(ω3)の場合も同様である。
について考察する。この代表的な解は双曲線関数を用いて、
この挙動の直観的な説明を試みる。最初の条件の式は、
と変形できる。これをよく見てみると、左辺はω1~3のそれぞれの2乗に対してM1~3の一次、二次の加重平均である。この条件の下で両者が一定となるような条件で動作が決定されることがわかる。当然、1次2次の比率は等しくない。これによって慣性モーメントM1(最小)あるいはM3(最大)に対応したωの比重が高い場合は両極端で安定するのに対してM2(中間)は1次、2次の比率の差をまともにくらった不安定な場所となる。これによりω2は少しでも両極端(ω1、ω3)の安定状態に移行しようとする動作となるのである。
以上がメビウスの箱の原理の定性的な説明となる。