引き続き、三円問題についてである。
今回は対象となる図形を①円、②楕円、③正方形、④長方形、⑤菱形として、自由な回転を与えた場合にどの程度、もとの図形を覆えるかについて定性的な考察を試みる。
このように座標軸上で図形を定義する。①円は半径1の円、正方形は辺の長さが2、②楕円、④長方形、⑤菱形については変形率α(0<α<1)を導入しy軸方向にα倍することでy軸方向に縮めるものとする。
これらの5つの図形とαの値による関係は次の図のようになる。
各図形に対して縮小率r(0<r<1)で縮小した上で、回転θを与えてもっとも元の図形を覆える位置を決め、その時の周上の2つの交点を結んだ線のy軸との交点のx座標であるx0を用いて被覆率(覆う割合)を評価する。図形の覆い方は原図形を左側から覆っていくとすると、x0が正となる場合はもう一つを原点を中心に右側から対称に覆うことで全体を覆うことができることを意味する。これは図形の周の50%以上を覆うことができることに対応する。図形の周の被覆率だけを考えればいいというのは図形が凸型であることが条件となるが、今回対象としている5図形についてはそれが保証されている。
以下、5つの図形それぞれに対して回転θを与えた時のx0の挙動を示す。α=0.7、r=0.9のケースとして図示している。
①円
縮小することで、円周を50%未満しか覆えなくなることは以前報告した通り。円は回転対称なので回転θによらずこのx0の値は一定となる。
②楕円
回転させない場合については円と同一の値となる。回転θを加えていくと、明らかにx0の値が増大していき、このケースではx0>0となる。θ=90°でもx0>0とできているが、0~90°の間に被覆率の極大値が存在しているように思える。θ=90°~についてはその180°の対称性から0~90°をちょうど折り返す形となる。この極大値の存在、その具体的な数値についてはまだ解析できていない。4次方程式となることが障壁となっている。
③正方形
回転させない場合はx0=r-1<0と負の値となり、2つ用いても原図形を覆うことはできない。回転θを与えてみると明らかにx0は減少していき、45°で最小値となるように見える。正方形においてはその90°の対称性から45~90°は0~45°をちょうど折り返す形となる。
④長方形
正方形と異なり劇的な変化を見せる。θ=0°においては、正方形と同じくx0=r-1<0であるが、回転と共にx0はまずは減少していき極小値をとったあと増加に転じる。その後θ=90°で最大値となる。この時の最大値はx0=2αr-1、となる。極小値の存在、そしてその具体的な値は未解析である。長方形も楕円と同様に180°の対称性を有するためθ=90°~の挙動は楕円と同様である。
⑤菱形
これが最も複雑な推移をたどる。θ=0°においては正方形、長方形と同様にx0=r-1<0であるが、回転を加えるに従ってx0は正方形同様に減少していくが、ある値に到達するとカタストロフィ的にx0は跳躍してθ=0°の時の値に復帰する。復帰してから以降はθ=90°までそのままの値付近をうろつくように見えるが詳細な挙動は未解析である。
以上の結果を踏まえて、5つの図形について回転θに対するx0の値をプロットしたグラフを以下に示す。
これはあくまで定性的なグラフであり数値的には厳密ではない。直線なのか曲線なのかも未解析であり、あくまで傾向を示しているのみである。
以上より、この代表的な5図形に自由回転を与えたときの被覆性について下記を結論付ける。
(1) 2つで原図形を覆うことができるのは楕円と長方形の二つである。
(2) 長方形はθ=90°のときが最も効率よく覆える。
(3) 楕円は0~90°のどこかに最も効率よく覆うことができる最適な角度が存在する。