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★Beat Angels

君がすべきことはただ一つ、ニューヨークへ行くことだ -ジャック・ケルアック

柿の木のある家

 わが故郷の家の庭には一本の柿の木がある。私が3歳の時、父と訪れた縁日で苗木の形で買ってきたものである。それは当時玄関先に無造作に植えられた。それから桃栗三年柿八年。私が小学校高学年になる頃に柿の木は初めての実をつけた。そしてそれが残念なことに渋柿であったことも同時に判明した。

 そして今年も柿の実の季節である。現在、故郷の家は普段だれも住んでいない。このまま柿の実が熟して落ちてしまうのではないか、という不安の声がご近所の方々から聞かれたこともあり、先週末を利用して柿を取りに行ってきた。

 

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 柿の実をマジックハンドのような剪定はさみで切り落としていると周りで鳥たちが一斉に鳴きだした。そう言われて思い出してみると、鳥たちは実ったばかりの渋柿には眼もくれない。でも、柿の実がさらに熟して落ちる寸前になると甘く変わるのか、実をついばんでいるのを見かけた。

 鳥たちは今回私に柿の実を全部とられると思ったのだろう。そこで枝の頂上付近の柿の実20個ほどを、切らずに残してあげることにした。 
 

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 正確に数えてはいないが推定で250個。

 柿の渋を抜くためには焼酎が使われる。アルコールが酸化してできるアセトアルデヒドが渋の原因であるタンニンを不溶化させることとで渋みが取り除かれる。近所のスーパーに焼酎を買いに出かけた。その途中、麦がいいか、芋がいいかと考えながら歩いていたが、スーパーの酒コーナーを見ていてそんな迷いはすぐに吹き飛んだ。柿の渋を抜く専用の焼酎を見つけたのである。

 その名も・・・

 

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 原料用アルコール。濃度も47%と高い。ちょっと飲んでみたが薬品のようでだめだった。確かにこれが美味しいとしたら値段も手ごろだし、ヒット商品になるであろう。

 

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 ラベルに書かれた手順に従って、焼酎に浸した柿をビニール袋に詰め込む作業に追われた。このまま室温で放置すれば5日間ほどで渋が抜けるはずである。柿が色づいたことを知らせてくれた御近所の方々にはビニール袋のままおすそ分けした。

 あらためて柿の木を眺めてみる。幹の表皮も色あせてきて老木の雰囲気も漂う。それもそのはず樹齢は50年を超えているので寿命を迎えてもおかしくない年代である。

 

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 柿取りと渋抜きの作業一通り終えて庭を眺めながらタバコを一服していると、季節外れの黄色い蝶が庭に舞い込んできた。それは小さめの蝶で動きがとても素早い。蝶は柿の木の周りを何かを確かめるように飛んだかと思うと庭を一巡りし、最後に私の目の前を斜めに横切ったあと、青い空の向こう側に吸い込まれるようにして消えていった。