彼は、黒板上に書かれた直角三角形の図を目の前にしながら深い思索の中にいた。
彼は一本の補助線を引いてみた。点Bから辺ACにおろす垂線である。そして垂線の足を点Dとしてみた。そしてさらに考察を進めていった。
線分BDは元の三角形△ABCを二つに分ける。分けられた小三角形の角度を考えていると、その二つの三角形△ABD、△BCDは元の三角形△ABCと相似であることに気が付いた。これこそが直角三角形特有の事情であることにも。
その二つの小さな三角形の斜辺の長さは、a, そしてbである。そして元の三角形の斜辺の長さはcである。これは相似比がa:b:cであるということだ。相似な三角形の面積は相似比の2乗に比例する。これはある定数mを考えると、それぞれの三角形の面積は斜辺の長さの2乗にmを掛け合わせたものとして表現が可能である。
次に大事なことは3つ三角形は足し算の関係にあることである。小さな三角形の面積をE1, E2とすると、大きな元の三角形の面積Eは、E1とE2の和で表される。
以上から、次の式が導かれる。
そしてとうとう彼は次の歴史的に極めて重要な法則を結論付けた。
彼はこうして悲願であった相対性理論構築の入り口に立ったのである。