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君がすべきことはただ一つ、ニューヨークへ行くことだ -ジャック・ケルアック

ノブヒコとアイスコーヒー

 ノブヒコはコンビニエンスストアのアイスコーヒーが気に入っている。店にはこだわらない。夏の暑い日にはコンビニを見つけると立ち寄ってアイスコーヒーを購入するのが日課になっている。

 

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 ある暑い日のことである。ノブヒコはいつものように近所のコンビニに立ち寄ってアイスコーヒーを購入してコーヒーサーバーで煎れていた。すると、一人のお爺さんが同じくアイスコーヒーを購入して隣のサーバーにやってきてセッティングしようとした。

 お爺さんはカップの中でつながってしまっている氷を壊そうと手に力を入れたのであろう、運悪く氷が破裂してカップから勢いよく飛び出した。氷は全部フロアに散乱してしまった。お爺さんはまたカウンターに行って店員に説明したが店員からはもう一つ買いなおすように言われているように見えた。

 ノブヒコは遠くでコーヒーを飲みながらそれを見ていた。お爺さんが仕方なくもう一つ購入しようとしているのを見たとき、ノブヒコは居たたまれなくなって店員に話し始めた。

-この客人はまだ、実際のコーヒーを受け取っておらん。それなのに全額100円で買いなおすというのはちょっとおかしいのではないかな。

-でも・・・そういうことになっておりまして。。。

-では、違う質問をしてみよう。私はこのコーヒーを飲みほしたのでもう一杯お代わりをいただきたい。でもカップにはまだ氷が入っているのでこのまま使わせてもらう。では一杯いくらになるかな?

-100円になります。

-ほら、やっぱりカップは無料ということではないか。

-・・・

-この客人にただで代わりのカップを渡してあげてはくれまいか。

-・・・そう言われましても・・・

-分かった、こうしよう。私はこの客人のまだ受け取っていないコーヒーをこの自分のカップで譲り受ける。その代償として客人に100円をお支払いする。そしてこの客人はその100円でもう一つカップから買い直せばよろしい。これでどうかな?

 店員とそのお爺さんともにうれしそうな顔をした。

-それならば、結構です!

 難しい局面を解決したノブヒコは意気揚々と店を立ち去っていった。暑い日の昼下がりに吹き寄せた一陣の涼風のように。そしてノブヒコは浴衣を着て来ればよかった、と少しだけ後悔した。