もしも最優秀特撮主演女優賞という映画賞があったとすればその栄誉は間違いなく水野久美に贈られるであろう。
1937年新潟県出身。57年松竹映画でデビュー。劇団俳優座で活躍する一方で58年に東宝に入社。『日本誕生』(59年)などに出演。『妖星ゴラス』(67年)以降、東宝特撮映画のヒロインが定着する。『マタンゴ』(63年)の奔放なシンガー役、『怪獣大戦争』(65年)の地球人に恋をするX星人役など、個性的な役柄を妖艶に演じている。
少し前までテレビドラマにも出演していたので名前は知らなくても顔は知っているという人は多いに違いない。それほど個性あふれる魅力的な女優さんである。その存在感は時には怪獣さえも食ってしまうほどである。南方系を思わせるはっきりとした顔だち、未だに外国人のファンも多いのもうなづける。
マタンゴ。食べると自分もキノコになってしまうというキノコを夢中でほおばるシーンがトラウマとなった。
後日談によるとこのキノコはピンク色のお餅で実際に美味しかったとのこと。
そして怪獣大戦争のX星人役。
宇宙服を着た地球人ではなく、宇宙人そのものである。普通のお嬢さん、お母さん役などの役はほとんどなく、こうした個性的な世界を一貫して生きてきた人で、インタビューなどでも歯に衣着せぬ発言が役柄そのもののようで小気味いい。
2002年のゴジラにも特別出演した。役どころはなんと「女性総理」。よくぞここまで特撮物を極めたか、と感慨深かった。次はゴジラを育てるおばあさん役をやりたいと未だに意気軒昂なのであった。