読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

★Beat Angels

君がすべきことはただ一つ、ニューヨークへ行くことだ -ジャック・ケルアック

相対論的世界観

 高速で交差点に進入する。通りの両側のビル群は彼方の透視図における消失点から視界に流れ込み、通り過ぎるとやがて視界から消え去る。右手遠方からタワーの影が近づいてくる。目に映るタワーの動きはせわしない通り沿いのビル群と比べると緩慢で優雅だ。

 こうした風景の動きの相対論的な効果を考えてみる。光の速度に近づいたときに観測者から見てこの街並みの景色はどう変わって映るのだろうか。

 数式での表現は難しいので推論の筋道と結果のみ示す。

 ①観測者のいる系をS、街並みをS'として、時空間座標で考える。
 ②それぞれの座標をS (t, x, y, z)、S'(t’, x’, y’, z’)とする。x軸は車の進行方向、つまり道路の方向でもある。鉛直方向をz軸、直角に交差する道路の方向をy軸とする。
 ③S'はx軸方向に相対速度vでSに移動する。車が移動するのが普通だが便宜的に街が速度vで移動してくると考える。
 ④S, S'の時空間座標の変換式はLorentz変換で与えられる。移動方向がx軸なのでy軸、z軸の座標は変化しない(y=y', z=z')。x軸ならびにt軸については相対論の要請により、両者ともx', t'を含む表式となる(式は省略)。
 ⑤Sの観測者の目に映るとはどういうことかを考える。S'における座標(t', x', y', z')から発せられた光が有限の光の速度で観測者Sに届くのを観測者Sは見る。
 ⑥観測者Sの観測する点を(0, 0, 0, 0)に固定する。これとミンコフスキー空間上で距離の等しいS'上での点を求め、それを観測者Sの座標に戻すことがSでの目に映る映像を求めることになる。

 結果をイメージとして示したのが下図。 

   f:id:taamori1229:20150119230139j:plain

 黒が静止している場合(v=0)、赤が速度vで移動している場合を示しているが、速度がかなり光速に近づいた場合でかなり誇張して描いている。また、Sの座標を上では(0,0,0,0)と書いたが、絵的にわかりやすいように、(0, 0, 0, 10m程度)とした。

 このように高速で動きながら風景を眺めると相対論効果で距離の離れている上部の景色が消失点に吸収されるかのように歪んで見えることになる。この効果は上部にいけばいくほど大きい。これは観測者から距離が離れているからであり、タワーなどの背の高い構造物の歪みは相対的に大きくなる。

 光の速度は約30万km/秒と非常に大きいので、このような景色の歪みを我々が見ることはない。しかし仮に光速が30m/秒だったとしたらそれは時速108kmに相当するので、時速80km程度で車を走らせても上図のような光景を日常的に見ることになる。さらに光速が3m/秒(時速11km)だったとしたらマラソンをする程度でも風景の歪みに気がついたであろう。その場合ギリシャ時代においても相対論は発見されていたかもしれない、と思う。