鮮やかな思い出はすてきだ
だがおぼろな思い出も懐かしい
あの秋のハイキングで
君は僕になにを告げたのだろう
あまりの紅葉に
あまりの鮮やかさに
僕はなぜか浮き浮きしてしまい
都心からのあまりの近さに
あまりの故郷らしさに
僕は君さえも忘れそうになった
本当はとても大切なことを
あの日の君は告げたのだ
別れの季節が近づいていることを
田舎に帰るとか言ったことを
はっきりしないおもいでが
この秋はひどく懐かしくて
<高尾山・八王子市>
『東京逍遥純情詩集('80~'85)』より