小学校のころの帰り道はひたすら長いだけの田んぼの中の一本道だった。僕たちは退屈しのぎに「グリコ」をしながら帰った。グリコとはじゃんけんをして勝った人が、勝った形に応じて「グリコ(グーで勝った時)」「チヨコレイト(チョキで勝った時)」「パイナツプル(パーで勝った時)」と音節の分だけ歩数を進むことが許されるというゲームであり一番先に立ったものが勝ちというものである。グリコならば3歩、チョコレートならば6歩、パイナップルも同じく6歩である。
この3歩、6歩という歩数の差が気になっていた。グリコで勝っても3歩しか進めないからだ。3つの形の出す配分に秘訣があるのではと当時から考えていて、グーを少なめに、チョキを多めに出すと勝ちやすいことが経験的にもわかっていた。
ここでそれを確率計算で求めてみる。
私がグー、チョキ、パーを出す確率をそれぞれ、Pg, Pc, Ppとする。相手は3つを等しく1/3の配分で出してくると仮定する。1回の試行で自分が相手よりも先に進む歩数の期待値をΔとする。
Δ=(自分が勝って進む歩数の期待値)ー (相手が勝って進む歩数の期待値)
=(自分がグーで勝つ確率)x 3+ (同左、チョキ) x 6 + (同左、パー) x 6 -
(相手がグーで勝つ確率)x 3- (同左、チョキ) x 6 - (同左、パー) x 6
= Pg x 1/3 X3 + Pc x 1/3 x 6 + Pc x 1/3 - Pc x 1/3 x 6 - Pp x 1/3 x 6 - Pg x 1/3 x 6
= Pc - Pg
このように"0"にならない。グーが「グリコオゲン」など、6文字だったならば"0"であったはずなのだが。
これより、グリコの必勝法が得られる。チョキを多めに、グーを少なめに出すことである。チョキで負けても相手は3歩しか進めない、それよりもグーで負けて相手が6歩進むのを阻むべきである。極端にチョキしか出さないと心に決めてみる。すると上式は、
Δ = 1
となる。つまり、一回の試行のたびに1歩の割合で勝つことができる。100回で100歩である。もちろん手の内がバレるのは困るので時々、勝敗に影響のないパーを出してかく乱することも必勝法の一つであろう。