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君がすべきことはただ一つ、ニューヨークへ行くことだ -ジャック・ケルアック

プロビデンス探訪記(第6回)

・・・その距離は一日ごとに延長して丘のふもとへ向けて足を伸ばしこの旧都のより古い、より異様な部分へと踏み入っていった。もっとも裏手の壁と破風屋根の特徴のあるジェンクス街から影の多いベネフィット街へ降りる急坂までくるとさすがに彼は躊躇して足をとめた。目の前には扉口にイオニア様式の壁柱を立てた古雅な家、かたわらに切妻屋根の建物、そしてその背後にわずかに残る原始的な耕作地が眺められた。たしかにこの付近にジョージ王朝期風のダーフィ判事の大きな邸が昔の威容をとどめているはずだ。このあたりから南にかけて貧民街が広がりだす。

            (『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』より引用)
 
 
ベネフィット街は『チャールズ・ウォード』の中で散歩のシーンとして登場する。乳母車時代、幼年時代を経て、冒険にあこがれる少年時代まで。実は、ラヴクラフト自身のもつプロビデンスへの愛惜の念を織り込んだ作品である。
 『チャールズ・ウォード』という作品自体が、彼をはぐくみ見つめてくれたプロビデンスという街への彼のオマージュであると言っていいであろう。物語自体は陰惨な過去とそれが現在に派生させる奇怪な事件に終始するものの、街角の風景描写にはどこか彼の深い愛着が感じられる。

 

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    <ベネフィット街:光>        <ベネフィット街:影>
 

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    <ウォレット医師の家>
 
 「チャールズ」に登場するウォレット医師の家。ベネフィット144。今では「The Old Court Bed & Breakfast」という名前のしゃれたホテルとなっている。
 当初ここに宿泊しようと予約を試みたが英会話の問題で果たせなかった。ここは、ホイットマン夫人の家にも近い、勿論、あの名高い忌み嫌われた家にも。

 

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 ベネフィット88。サラ・ホイットマン夫人は女流詩人。ポーは彼女に恋してプロビデンスに住みつき、しつこく言い寄っていたらしい。家の壁には彼女が住んでいたことを示す銘板が残っている。