★Beat Angels

君がすべきことはただ一つ、ニューヨークへ行くことだ -ジャック・ケルアック

魔法の鏡

 

魔法の鏡を手に入れた

蜃気楼の国で露天商から手に入れた
彼は砂漠の向こうの町からやってきたと言った
彼はそれを売り渡すことを渋っていた
その魔法の鏡は好きな人の
その時々の表情だけをずっと映し出してくれる

僕はそれを机の上に飾った
そしてずっと好きな人の
愛らしい表情を
飽きもせずにずっと眺めていた

心地よさそうに眠る顔
小さなあくびとともに寝ざめる朝の顔
微笑む顔、はにかむ顔、ちょっと不機嫌な顔

その鏡は顔以外は写さない
だから歯を磨いたり、顔を洗う時の表情は
いったい何が起きたのかと理解するまで
時間がかかった

僕は一日中好きな人の
変化にとんだ表情を見ることに
酔いしれて時間を忘れた

でも、夜のこと
彼女は目をつぶったかと思うと
唇をつんと突き出した
そしてあろうことか口を大きく開けて
舌をくるくると回し始めたではないか

そしてその後の眉間にしわをよせた
上気して苦しそうな表情は
僕を奈落の底に突き落とした

僕はその魔法の鏡を
蜃気楼の国の露天商に返した
露天商はにやりと笑って受け取ると
再び砂漠へと旅立って行った

それ以来僕は鏡を見ることがいやになった

 

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