咲きたての花を折る少年を
ぼくはなぜ叱ってしまったか
たとえひそかに手折られても
それが花と少年の愛ならば
花に哀しみはなかったろうに
咲きたての花のようなひとに
手も触れず唇もかわさず
それが心の愛だなどとは
なんと勝手な言い草だろう
悲しみながら去った青春が
今になって分かるというのに
少年よ、花を美しいと思ったら
口笛を吹きながら手折れ
その瞬間もこれから先も
花はずっと咲きつづけるだろう
多分、それが愛というものだから
<吹上コスモス畑・荒川区>
『東京逍遥純情詩集('80~'85)』より