大多喜町の近くに西部田村という村があるはずである。つげ義春の『西部田村事件』という作品の舞台となった村である。
大多喜町でいきなり、行き先表示で「西部田」という地名を見つけた。実在する地名だったのである。私は指示される方向に歩き始めた。やがて街道は夷隅川と交差する。
夷隅川は大多喜街を迂回するように蛇行している。従っていたるところに淀みができるのでまるで沼のような雰囲気の場所ができる。沼?そう、つげ氏の『沼』もこのあたりをモデルに書かれた作品だと思う。
さらに西部田村を探して歩き続けたが、突然「ドーン」という音が聞こえた。それは鳥を追い払って田畑を守るためのものだ。きっとこの音が『沼』のラストシーンにつながっているのではないか、と思った。
西部田に到着。のんびりした田園と林が広がる。そしてその向こうに病院も。
登場人物が揃ってきた。まさにここはあの西部田なのである。
いすみ鉄道の線路。これなどは『ねじ式』で少年が線路をさまよい歩くシーンを思い起こさせる。
次に、大原を目指そうと思った。いすみ線で大多喜から大原に向かう。いすみ線はさぞ昔ながらの古めかしいローカル線だと想像したが。。。
一両編成なのはいいとしても、
ちょっとこれは。。。
気を取り直して『海辺の叙景』の舞台となった大原を目指すことにした。大多喜の駅からいすみ線で海岸に向かい、約30分ほどである。