★Beat Angels

ディーンは路上放浪には打ってつけの男だ。というのも彼は実際に路上で生まれたからだ。

★東京逍遥純情詩集

新・富士見伝説

ここから見える富士山はそれはそれはいつも美しいです近すぎず、遠すぎずちょうどほどよい絵のようであくせくと働いてそれでも心が暗いのだったらあなたもここにいらっしゃい枝を伸ばしすぎた雑木林と波立つ風の湖とアスレチックに興じる子供たちがいきいき…

なぜ?

わが愛しい子よお前の輝くような言葉を聞くために今日もまた哲学堂を訪れようなぜ、あれは三学亭というの?なぜ、六賢台で、なぜ、妖怪門?なぜなの?なぜ・・・?わが愛しい子よお前の叫ぶ「なぜ」の洪水に私の心は飲み込まれそうだお前の中に育つ大いなる…

古い時計

君は覚えているかい雷門の大提灯の下で二人はしゃいでいた頃を 覚えているわ・・・ 仲見世でべっ甲の店をのぞいて 日本髪の櫛の店をひやかして言問通りの雨が上がるまで雷門で雨宿りした頃に僕たちはなぜ戻れないのか? 古い時計が壊れたから・・・古い時計…

秋の抜け道

雑木林を抜けてあなたが帰っていった道は秋が見える道なのだ池をめぐってお稲荷さんに出ればあなたは独りつぶやくだろう私はきっと耐えられます、と 武蔵野の秋は澄んだ空に風が笛を吹き電車がきらめきながら走り妙に心がはしゃいだ離れ離れの恋人たちの瞳さ…

武蔵野の小枝

やるせないばかりの無力な毎日だったとしてもいのち二つここまで生きてきてしまったならの小枝くぬぎの小枝独歩の詩のそのままの武蔵野の風にぼくらの愛を思い返せばまるで小枝のようではないか?雨の日に嵐の夜に折れそうになりつつもそれでも生きながらえ…

精霊

恋人よ・・・あなたが去った今も花は春になると咲きます繰り返し、繰り返しあなたが花の精霊であったと私に告げているようです 恋人よ・・・川岸を歩いた思い出の上に暗い明日を語った季節の上に花はもう散っていますあなたのすべてを埋めるように花は降りし…

晩秋の水郷にて

水の優しさよ私の心から棘を抜いておくれ午後の風にゆれてさざ波のような後悔・・・ 水の清しさよ春には桜の花を浮かべ初夏には菖蒲を開かせ晩い秋の今は私の別離を映しておくれ 水のぬくもりよいつか私も家族を電車に乗って訪れる午後を心のやすまる日々を…

牡丹の里

花よ、お前が明日開くなら遠い初恋のうたを作ろう牡丹よ、お前が僕を呼ぶならば夜明けに訪ねて行ってもいいあくせくと生きることに倦きたなんて言わないから安心してくれ 花よ、お前は忘れていないか?かつてここで契りあった声を牡丹よ、お前のあでやかさの…

日曜日のセーター

明るい影をあちこちに作って日曜日の恋人たちは騒ぎの中で夢を見ている座り手のない街角の椅子にそっと座り直したのは思い出去年の秋の日曜日には私もそこで夢見ていたのに 寒い季節を出向かえるように今日は厚いセーターを着ようまだ半袖の恋人たちに向かっ…

別れから明日へ

冬から春へあるいた径を夏から秋へあるいた径を君はもう忘れてしまったか色だけ変えるけやきの並木は追憶を塗りかえはしないのに秋のかげろうのように足早に通り過ぎた人はとても悲しそうにみえたけれどあれは君ではなかったかスカートの裾に枯葉が一枚愛か…

鮮やかな場面たち

忘れられない場面がいくつもいくつもあっただから今だって日比谷を通ると胸が温もる 春雨に濡れた公園でやるせなく敗れた恋とか木枯らしのベンチで聞いた思いやりのある友達の言葉とかコンサートの帰りにやっとの思いで告げた愛の台詞とかひとつひとつの場面…

秋の春情

おだやかな秋に明日は上野に行こうと君を連れ出した公園をめぐる季節の限りない記憶のかけらが落ち葉のように散り始める 多分あしたも空は晴れぼくらは無口に愛を語り動物たちに会い乾いた道を歩くだろう子供のように手をつないで 遠い春に出会い秋に別れた…

愛しき街で

鋭角に空を切り裂くビル群をささやかな緑がささえる乾いていく人の心を遠慮がちに風がささえる誰もがわらべうたを忘れ生活の戦士たちは疲れを抱きしめて街を往く それなのに誰もこの街を捨てはしない寂しさを愛にすりかえて哀しさを思い出にすりかえて昨日か…

愛のせせらぎ

そのせせらぎの音には心をくすぐるような甘いささやきがありましたずーっと前の春先のように乾いた心のひだを美しい水が流れていく音は愛がなければ生きていく甲斐がないとささやいているようでしたいつの頃だったかどんな苦しみや不幸にも耐えられそうな時…

にわか雨

にわか雨に出会ったらなぜかしら昔の唄が歌いたくなるつかの間の雨の匂いに誰もが昔を思い出すように心の中はやさしさでふくれあがりのぞきこむ高層ビルにもつれちがう恋人たちにもふと微笑んでしまう時間誰も好き好んで青春から遠ざかる訳ではないとつぶや…

あこがれ

淋しいね・・・青春とは明日が見えない季節で通れはしない門だと分かっていればはなから寄り付くこともなかったのに 哀しいね・・・あこがれに揺れていた頃は手に入らない聖少女を思うようにいつもあの門だけを心にためてそれだけが生きがいなどと思って 不…

とうきょう童歌

世の中なんて何ひとつ思った通りに行きゃしないあしたも見えて来やしない大仏さんはどこにいるそこから幸せ見えますか・・・ 逃げてく夢を追いかけて転んだはずみに泥だらけ心もよごれてしまいそう大仏さんはどこにいる心を洗ってくれますか・・・ 大仏さん…

青春晩鐘

通り過ぎて振り返ればその季節の短さに人は黄金色の枯葉をみるだろう青春とは振り返って気がつく夕映えの晩鐘なのかもしれない 懐かしい学生街の懐かしい古本屋の妙に暖かい活字たちよ君たちのページの中にはいつも黄金色の枯葉がはさまっている そして君た…

藤色の君に

どうしたんだ?ずっと一人で立ちつくして君が静かな分だけ風の音がはっきり聞こえるそういえば君は五月生まれだったね去年の誕生日は浮かれていて公園のことなんて忘れてた藤色っていいな去年よりずっと大人になって君には藤色がよく似合うだまっていては不…

夢の橋

歴史が夢を見ていた頃はあなたは生まれていなかった歴史が悲哀をうたったころもあなたは生まれていなかったそれなのになぜあなたはこの橋が好きなのか 橋自身の思い出も幸せだった時代にも深い緑を染める木とも何一つ関わりがないのにあなたはこの橋がすきな…

早春

美しい早春は不幸だったふたりに優しい肌寒さを贈るだろう芽生えたばかりの堤防の雑草が遠慮がちになぐさめてくれるだろう死に急ぐことはありませんよ、と 美しい早春は古いカーディガンをひっかけて対岸の遊園地の楽隊に合わせて堤防のフロアで円舞曲を踊り…

むさしの

落ち葉をかき集める人は思い出を焚き焚き火に手をかざす人は思い出を温める今もそんな風景が似合う場所 人と人との関わりが煙となって秋空に向かうと水鳥たちが冬支度をはじめる水の豊かな公園では孤独が音を立て始める 武蔵野を時雨が駆け抜けた翌朝は秋が…

冬の公園

寒い日にばかりあなたと逢うわけではないのにいつも僕らの間には風があるあなたが黄昏を見つめる間に僕が行く末を見つめる間に寂しくも重ねてしまう歳月気持ちのいい春でさえ僕らの間には風が吹くいくらか荒涼の気配をとどめそれゆえに愛した二人だけの場所…

歴史調のバラード

繰り返さなくなった歴史はネジの壊れた時計のように飾っておくしか能がない開かれているのに閉ざされて覚えているのに忘れられて繰り返さなくなった歴史は女でなくなった女のようで厚化粧をしているのに化粧をしていないように哀しいそれは美しければ美しい…

川のようにさよならを

二人歩きにくたびれたから一人歩きに切りかえた少し歳をとったけどお互いまだ捨てたものじゃない玉川上水みたいなものさ季節によっては若々しいよ 二人しゃべりにくたびれたから一人しゃべりに切りかえた風を相手に泣き言を水を相手に思い出を玉川上水みたい…

東京・ふるさと

吹き去った風がまた還ってくるような朝がある同じような匂いをのせて同じような冷たさを含んで 季節をめぐる風たちは永遠の旅人なのかもしれないけれども彼らに聞いてみれば遠い昔のこの街のことや住んでいた人々の息遣いがよくわかるかもしれない 今朝還っ…

人いきれ

人いきれは暖かくて少し哀しい人いきれは平和だけど少し淋しいどうしてだろういろいろな人がいるのだお金を沢山もった人友達のいない人陽気な人今日仕事をなくした人つれあいを恨んでいる人愛情でふくれた人ボロ市の人いきれはいろいろな人生の人いきれだ心…

美しい言葉のように

何一つ口に出さなくてもこれ以上に美しい言葉がないような言葉をあの時代には語っていた遠い春の学生通りを汗ばみながら駆け抜けた片恋たち冷たい秋の学生通りを傘もささずに歩いた青春たちまるで美しい言葉のようだった時代できることならばいつも美しい言…

ためいきの道

この道をいくと誰に出会えるのですかこの道はどこへいくのですか木漏れ日は素敵に哀しい影をつくり落ち葉を踏む足音はため息に似た優しさです この道をいくと淋しい人に会えますかその人は私と同じ足取りで向こうから歩いてきますかだったら私このあたりで待…

幸福 (しあわせ)

いつも幸せを幸せだけを夢見ていたいなら池の美しい庭に来るといい小径をめぐり水に映る静けさを眺めるうちに心は安らかな寝息をたてるあの幼い頃に苦しみなど何も知らないころにこの風景を心に染めていたら私には今でも幸福しかないだろう汚れたものを見過…