★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

滑らない話(スーパーボールの運動解析)

先日、近所のスーパーで駄菓子屋フェアが催されていたので立ち寄り、そこで昔懐かしいスーパーボールを見つけたので買ってきた。

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それで半日遊びながらその不思議な運動の正体を探っていたのだが、結論としてそれが床面で反射する際にしっかりと床面に粘着して決して滑らない、という特性にあることが分かった。

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ボールは床面で反射する際に短い床面から時間摩擦力Fを受ける。これにより、速度、回転数ωが衝突の前後で急激に変化する。摩擦力はボールの速度を減速させるのだがそれがまったく同じ大きさの力で回転運動を加速させるのである。ボールが受ける摩擦力Fは水平方向であるので水平方向の速度だけが影響を受ける。垂直方向の速度については摩擦力の影響を受けないのでここでは考えない。

ボールの床面衝突前後においては、①運動量保存、②回転角運動量保存、③トータルの運動エネルギー保存、の3つが成り立つ。③については完全男性衝突を仮定している。

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ボールの半径をa、慣性モーメントをIとした。最初の2式から摩擦力Fを消去すると、

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が得られる。衝突前後を添字の1,2を使って表示するにすると、第3式から、

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または、

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が得られる。これらがボールの衝突運動を記述する基本方程式となる。

特に後者については、

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と定義すると、

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という簡単な式となる。この速度の意味を考えてみると、この速度はスーパーボールの表面にマーキングを行った時にそれがボールの一番下を通過するときの速度に他ならない。

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以上より、スーパーボールの衝突運動とは、その前後でこのマーキングの速度が同じ大きさで反転することであると結論づけられる。

さて、以上の考察結果を用いて具体的なケースを考えてみる。


◆ケースA:振動

まず、下記のような振動が発生する条件を求める。


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これについては、

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であることを用いて、

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という条件が得られる。この場合、衝突の前後で

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となり確かに振動運動である。またこの時のマーキング速度は、
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となり衝突のたびにきちんと反転する。



◆ケースB:スーパーボールらしからぬ運動


次の条件、

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が成立するとき、スーパーボールらしからぬ運動となる。この場合は、

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水平速度、回転ともに保存される。この場合のマーキング速度は、

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であり、床面からみてボール表面は静止している、よって摩擦力Fが発生しないことがその理由である。

押絵と旅する娘

窓にもたれながら目を覚ますとその男を乗せた電車は音も立てずに夜の底を走っているところだった。男の斜め前の席には一人の娘が座っていて男を見ている。男は中腰になって電車の中を見渡してみたが電車の中には娘と自分の二人しか乗客はいなさそうだった。

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電車は町から遠くを走っているらしく窓の外には街頭が時折思い出したように点々と続いているだけだった。男はその時点で自分が降りるはずの駅を乗り過ごしたことに気がついた。ふと少女の隣にある目の前の席を見てみると古めかしい藍色の風呂敷に包まれた額縁のような形のものが立てかけられている。

-これですか?

娘は男が目が覚めるのを待っていたかのように顎で風呂敷包みを指し示してたずねてきた。男は我に帰ると少し寒気を覚えて、半袖のシャツから出た両腕を交互にさすった。それを見ていた娘は言った。

-ちょっと冷えてきましたね。今朝、家を出るときに庭先のザクロの実がぱっくりと割れているのを見ましたからもう夏は終わりです。ところで、やっぱりこれですよね?

娘はいたずらっぽい目をしてまた顎をしゃくってまた風呂敷包みを指し示した。男は答えなかったが、その少女の愛らしいえくぼと、いたって現代風のその少女と風呂敷包みの対比に抱いた好奇心も手伝ってだまってうなずいた。

娘は風呂敷を開くと額縁の絵がでてきた。それは布地をつかって縫いこむ押絵であった。広々とした歌舞伎の舞台のようで格子の天井が遥か遠くまで続いている。中央には黒い洋服姿の老人が座っている。17,8歳の着物をきた美しい少女がうれしそうだが少し恥ずかしそうな顔でその老人のひざにしなだれかかっている。老人は気難しそうな顔をしているが片手は少女の肩をやさしく抱いている。

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-この絵のこの男の人は私のひいおじいさんのお兄さんです。もう100年以上も前にこの絵の中に入り込んでしまってそれ以来ずっとこの絵の中に住んでいると聞いています。時々、退屈するだろうと思って今日も浅草の凌雲閣があった場所までつれていってあげんたんです。昔は12階という名前でひいおじいさんもそれが好きで何度も登ったそうです。それからこれも今でも残っています。

娘は白いバッグを開けると中から双眼鏡を取り出した。それは旧式の双眼鏡でとこどどころで金属が剥げ落ちていた。風変わりな形をしていて、どちらから覗いたらいいのかもわかりにくかった。娘はそれを男に手渡しながら言った。

-プリズム双眼鏡です。ひいおじいさんはこれでこの絵をみたらしいのです。ちょっと距離をおいてこの絵を見てみてください。

男はボックスを出て電車の反対側に移動した。娘は見やすいように絵を男の方に向けた。男が双眼鏡で絵をみようとすると、娘はあっと小さい悲鳴のような声を上げた。

-いけません。それは逆さです。逆さに覗いてはいけません。

男は双眼鏡を持ちかえて絵を見た。焦点があった瞬間、こんどは男の方があっと声をだした。単に青白いだけに見えた少女の頬はやや桃色がかって上気してまるで生きているのかと思えるほどだった。幼い顔には似つかわしくない大きな胸と腰のあたりから脚にかけての完璧ともいえる曲線のなまめかしさがあった。そして、逆に老人の顔には数百本の深いしわがあり、まるで拷問のような苦悶の表情をしていた。そしてさきほど肉眼で見たときは気がつかなかったがその歌舞伎の舞台のようなことろには他にも数限りない人たちがいた。恰幅のいい会社の社長と思しき人、買い物籠を抱えた主婦、飛行機のおもちゃを持った兄と妹など時代はまちまちで、ここ100年間に生きていた人たちを図鑑として収めたような様相であった。

男はこの世界が絵ではなく現実であると確信した。そして頭がくらくらして立っていられず、元の席に戻った。双眼鏡を娘に渡しながら言った。

-この絵のことを作品にした作家はその当時書けなくなって旅をしていたらしい。その旅の後で沢山名作を残したんだ。だから僕は彼は本当にこの押絵を持った老人に出会ったんだと信じている。実は僕も物書きを目指しているんだけど最近調子が出なくてね。今晩はそれで憂さ晴らしにちょっと深酒したら電車を寝過ごしたってわけさ。

娘は黙って聞いていたがまっすぐ遠くをみて、夢見るように話しはじめた。


-きっと物語りは・・・あなたの体から出て誰かに読まれたがっていますよ。この絵のことを書いた作家さんだってその作品は本の中では永遠になってあなたのような誰かに読まれることで新しい生を受けたように。

男はかねてから考えあぐねていたことを言い当てられたような気がした。そして何かが書けるような気がしてきた。すると、娘は男に向き直って言った。

-あなたの中から物語を本の中に出してあげてください。そうだ。ひとついい提案があります。知っていますか?物語は本の中だけでなく絵の中でも永遠になれるんですよ。

娘は手に抱えていた双眼鏡を逆さにして男をみた。男はぎくりとして双眼鏡のレンズに目をやった瞬間、世界全体が急に暗転してぐるぐると回り始め、そのまま吸い込まれていくのを感じた。最後の瞬間、押絵に描かれた人物たちがいっせいに自分に向かって微笑んだ気がした。そして一番前で満面の笑みをうかべた少女の顔の中にどこかで見覚えのあるえくぼが花を咲かせるのを見た。

 

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やがて娘は誰もいなくなった電車の中でほっとため息をつくと、押絵を風呂敷で丁寧に包みながら言った。

-そうですよね。本だって絵だって誰にも出会わなければ永遠というのはちょっと退屈すぎますよね。

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海水浴の最短救助ルート

ある日、海水浴監視員のA君は監視中におぼれている人(B君)を発見した。

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A君はB君を救助するために砂浜を走ってどこかから海に入り泳いで駆けつけることになる。一番早く駆け付けるにはどこから海に入いるのがいいのだろうか、と考える。

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B君に向かってひたすらまっすぐ走って、泳ぐという方法である。もしも走る速度と泳ぐ速度が等しければこれでいいであろう。しかし、普通は泳ぐ速度は走る速度よりも遅い。そうだとすると泳ぐ距離を一番短くする次の方法を考える。

 

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これならば泳ぐ距離は最短化できるが走る部分が最大となってしまい、これが不経済な気もしてくる。

いずれにしても、走る速度と泳ぐ速度の大小関係で最適な方法は異なってくることが予想される。これを数学的に解析する。下図のように座標軸、座標、速度を定義する。

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A君がB君の場所に到達するまでの時間Tは、

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で与えらえれ、求めるべきはこれを最少とするy0の値である。本式をy0微分する。

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これを"0"とすると、

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一見、面倒な式に見えるが図形として理解すると見通しがよくなる。

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このように砂浜を走る角度をθ1、海を泳ぐ角度をθ2とすると上記の結果は、

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と簡単になる。水陸のぞれぞれの速度v1v2が等しいときはθ1=θ2となり、上述の図(a)のように海岸線を気にせずにまっすぐ進めばいい。一般にはv1>v2と泳ぐ方の速度が遅いのでθ1>θ2となるように、(a)よりはB君に近いところで海に入るのがいい。泳ぐ速度v2が極めて小さくなるとθ2→0に近づいていき、極限では上述の図(b)のように陸路でいけるところまでB君に近づくのがいいことになる。

さて、監視員の話はこれでおわるが、最終的に得られた式は見覚えのある人も多いに違いない。光学でいう光の屈折を表現するスネルの法則である。普通、スネルの法則は媒体の屈折率nで表されるが、屈折率は速度の逆数に比例するので結果的に完全に一致する。以上の考察から言えることは、スネルの法則は言い方を変えると「光はいつでも最短の道を選ぶ習性がある」ということである。


Paul MacCartney Concert in Tokyo Dome

2018年10年31日、午後6時、東京ドーム。

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1.Hard Day's Night

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 8. I've Got A Feeling

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12. Maybe I'm Amazed

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13. I've Just Seen A Face

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17. Black Bird

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21. Eleanor Regby

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22. Far You

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25. Ob-La-Di Ob-La-Da

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27. Back in th USSR

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30. Hey Jude

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31. Yesterday

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33. Helter Skeltor

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ジョンズ・グリル(John's Grill)

 

5年ぶりのサンフランシスコ市街は秋であった。ユニオン・スクエアは改装工事中で閉鎖されていたが、それでもいつものように市内は大勢の観光客でにぎわっていた。

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ここパウエル通りは急な坂を上るようにケーブルカーが走っている。マーケット通りとの交差点が出発地点であり、ケーブルカーはここで回転して向きを変える。おなじみの観光スポットである。

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このすぐ近くに「ジョンズ・グリル(John's Grill)」という老舗のレストランがある。この店はダシール・ハメットのハードボイルド小説「マルタの鷹」に登場する。ハンフリー・ボガート主演の映画でも有名である。

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ボギー。トレンチコートと帽子、そしてタバコ。映画の中の彼は冷酷に敵を追い詰めていく。それは悪党に同情したくなるほどである。しかし最後にさりげない友情を垣間見せたりして憎めない。

この店の創業は1908年、100年以上の歴史を持つ。夜になると2階席でジャズの生演奏も聴くことができる。

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www.johnsgrill.com

 

店内には当時の写真がたくさん飾られている。

 

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主人公は私立探偵のサム・スペード。作品の中で探偵スペードは盗難にあった「マルタの鷹」という名の像を取り戻すことを依頼され、見事に取り戻した後でこのレストランに立ち寄り、ラムチョップと焼きポテトそしてスライスしたトマトを注文したのである。その料理は今でもこの店の定番である。


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この店の2階にはこのマルタの鷹の像が展示されている。

 

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じっと見ていると背後から銃を持った男が突然現れてガラスを破ってこの像を手にとって逃げていくシーンが頭をよぎった。残念ながらその日、ラム・チョップは売り切れだったので「John's Steak」を注文。


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探偵スペード、そしてボガートになりきって食後にコーヒーを注文した。ここまではよかったがさらに定番であるタバコに火をつけようとしたところ・・・店員に早く店を出ていくように叱られた。


”ボギー、あんたの時代はよかった”(沢田研二

 

特撮座標系(スカイツリー編)

前回に引き続き、特撮座標系の話である。

taamori1229.hatenablog.com


今回は同じく重力の影響を受けて塔が倒壊するシーンを撮影する。


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スケール比100分の1の模型を使って撮影する。

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この場合の回転角θに関する運動方程式は、塔の重心が高さの2分の1の位置にあるとして、塔の慣性モーメントをIとすると、

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で与えられる。塔を長さRの棒の形状とみなすと慣性モーメントIは、

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であるので、求める運動方程式は、下記となる。

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これを解くのは容易でないので、座標系変換でこの運動方程式がどう変換されるかを考える。
 

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これによると変換後の運動方程式は、R'=NRに注意して、
 

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となり、やはり重力の項が正しくならない。みかけのN倍の重力により現実よりも短時間に倒れてしまう。そこで、次の座標変換系を使う。
 

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この座標系によると、

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となり、現実世界と同じ運動が成立する。つまり、スケール100分の1の模型を使った塔の倒壊シーンを撮影する場合においても10分の1のスローモーションで撮影するのが正しいやり方であることがわかる。

 

特撮座標系(爆走車編)

-今日はラストシーンの撮影だ。
-はい、分かっています、監督。ラストシーンは主人公を乗せた車が爆走して崖から転落するシーンですよね。

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-車のスピードは時速100km。でもこんなシーンは町中では撮れないからミニチュアの模型を使って撮影しよう。
-100分の1のスケールですからこの4cmの車の模型を使いましょう。それに合わせて道幅とかビルの高さも全部100分の1にして製作しました。車の速度も100分の1の時速1kmで動くようになっています。

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-なるほど。本物と同じように撮影できているな。それでは次は崖から車が転落するシーンだ。車は時速100kmでそのまま崖から飛び出すんだ。

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-実物の場合で既に計算してあります。落下の時間は4.5秒、落下する地点までの飛距離は124mとなります。
-この5秒間はとても重要だ。観客も同じ飛翔感を味わうことになるからな。
-では、模型を使って撮影します。

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-あれ?なんだか拍子抜けだな。私には転落にしか見えなかった。映像で見てみよう。

 

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-落下時間はたったの1秒足らず、距離も10mくらいしか飛んでいない。これじゃだめだ。
-おかしいな、車はちゃんと時速100kmで飛び出しているように見えるのに。
-しかたがない。スローモーションで撮影することにしよう。
-はい、時間の流れを10分の1にしてもう一度撮影してみました。 

  

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-じゃあ、映像を見てみよう。

 

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-あれ?確かに車はゆっくりと落ちるようになりましたが、車のスピードもゆっくりになっちゃいました。飛距離も10m程度と変わりません。
-スローモーションにしたんだから当たり前だ。これじゃ自転車の墜落だ。
-じゃあ、車のスピードを10倍の時速1kmにしてもう一度撮影します。 

 

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 -こんどは結構飛びましたね。では映像を見てみましょう。

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-これで一通りクリアできました!
-よし、これで撮影終了だ。ご苦労さん。


さて、このように100分の1のスケールで撮影するとき、車の速度を10分の1にして時間の流れを10分の1の速度にすると重力の影響をきちんと再現できるということはどう説明されるのだろうか?

空間、時間のスケールを変えるというのは座標変換することである。そして、現実世界の物理法則である次の2式、

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が、その座標変換できちんと守られるかどうかがポイントになる。第1式が等速度運動、第2式が重力加速度運動である。

空間のスケールだけをN分の1にした場合は、

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という座標で表される。この座標変換後の運動は、 

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となる。等速運動はN分の1の速度にすればいいが、重力加速度運動の方はどうしてもN倍の重力がかかることになってしまう。車の例でいけば、車が急速に落下するように見えてしまうのはこの見かけの100倍の重力によるものである。これを回避するには重力がN分の1となる状況を再現するしかない。それは地球上で撮影する限り難しい。そこで次の座標系が登場する。 

 

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これで座標変換してみると、運動を表す2式は、  

 

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となり形が保存される。つまりこの座標変換に従えばスケールN分の1の世界で、現実と同じ重力加速度運動が再現されるということである。