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サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

3県境のこと(解答篇)

 


解答篇である。地図を眺めてみるとわかるが3県境を探すのは実は容易ではない。それならばということで接している県の数を数えてそれと3県境の数の関係を分析してみることにした。このような便利なサイトがある。


ここには各都道府県の隣接県数の情報が記載されている。隣接県数と3県境数の関係について考えてみる。県Aが4つの県と隣接しているものとする。日本には海のある県とない県がある。それを図示してみると、


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海のある県の3県境の数は隣接する県の数よりも1だけ小さくなることがわかる。

もう一つ考えないといけないことがある。海に囲まれたわが国にはぜいたくにも2つの海岸を持つ県が存在する。例えば兵庫県日本海と瀬戸内海の両方に面している。この場合は下図のようにさらに3県境は一つ減ることになる。同様の県は他には福岡県、佐賀県である。

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一般には3つ以上の海岸を持つ場合も考える必要があるが、日本の場合に限れば2まで考えれば十分である。

このように隣接する県の数から海岸線の数を引いたものが3県境の数となる。この3県境の数をすべての県について総和を求める。1つの3県境は3つの都道府県が共有することになるので、合計の数を3で割ることで3県境の数が得られる。


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以上に基づいて算出した結果、下表に示す通り日本には3県境が43か所あることが分かった。厳密には岡山県香川県広島県愛媛県は離れているように見えるが実は瀬戸内海にある島の上で隣接している。今回の議論には関係ないので除外した。

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3県境のこと(問題編)

こんな記事を読んだ。

www.asahi.com

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さて、ここで問題だがこれと同じような3つの都道府県の県境が交わる地点は日本にいくつあるだろうか?日本地図を見ていると四国には2つ、九州には3つあることはなんとか数えられる。その一方で北海道と沖縄には存在しないことは明白である。となると問題は本州にいくつあるか、である。それに5を足せば正解が求められる。

答えは43か所である。

地図を見ないで計算する方法がある。そのためには各都道府県ごとのあるデータが必要になる。それさえ入手できればあとは小学校時代に習った地理の知識だけで十分計算できる。

さてそれはどういう方法だろうか。

恋の対数スパイラル

あるターゲットをめがけて追跡していく行動をベクトルとして表現する。

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この図のようにターゲット、並びに自分の位置ベクトルをGxとすると追跡の方程式は、

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で与えられる。ここで、簡単のために両者の速度は等しく1であるとしている。

一番簡単なのはターゲットGが動かない場合である。初期状態(t=0)のG, xの位置をベクトル、Go,X0とすれば、上記追跡方程式の解として、

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という直線ルートが解となることは直観的にも理解できる。

しかし、ターゲットが移動する場合(G(t))については、一般解を求めることは難しい。そこで見方を変えて、ターゲットとの距離の変化について考えてみることにする。

次のベクトルを導入する。

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このLの時間変化を計算する。ターゲットGと自分Xの速度をVv(いずれも大きさは1)とすると、

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Vvの両者の角度をθとすると、Vvの両者が単位ベクトルであることから、

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となる。右辺は常に0以下の数値であり距離は近づく方向であることを示している。特にθが時間によらず一定の場合、ターゲットに到達する距離(L)と時間(T)は、初期の距離をLoとして、

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 で与えられる。これをグラフで示すと下図のようになる。

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さて、このように角度を一定に保ちながら追跡するケースというのは普通では考えにくいが一例として4角関係の場合を示す。4角関係とは、A君はB子さんが好き、B子さんはC君が好き、C君はD子さんが好き、D子さんはA君が好き、というケースである。4人は正方形の角に順番に配置され、好きな相手に向かって同じ速度で歩き出すものとする。

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すると4人はどういう経路をたどるかを示すと、

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このように4人は同じ経路をたどって正方形の中心に向かっていく。4人の位置関係は常に正方形のままでそれが次第に縮んでいく。4人の経路が描く曲線は「対数スパイラル」と呼ばれる曲線である。

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中心に近づくにしたがって曲線の半径は小さくなり、回転の速度は上がっていく。正方形は回転しながら縮んでいき、やがて中心点に4人同時に到達する。4角関係にふさわしいエンディングと言える。

この4角関係が上で示したグラフのθ=90°の場合に相当する。この場合の4人の歩く経路はとてつもなく複雑な曲線だが中心に到達するまでに歩く距離は正方形の一片の長さLoに等しい。この一見不思議に見える現象は次のように直観的に説明できる。

A君の立場にたって考えてみる。最初、A君がみつめるB子さんは距離Loの場所にいる。ここから二人同時に歩き始めるがA君から見るとB子さんはA君からの方向から90°方向(垂直)に向かって歩いていくのでA君に近づくことも遠ざかることもない。歩いていく過程でA君の視点からビデオカメラを回してみたとすると、そこ写るB子さんの姿はこれはB子さんが最初の場所にとどまっていてA君だけが近づいていく場合と変わらないのである。

さて、4角関係以外の場合はどうか。

3角関係の場合はグラフのθ=120°の場合に相当する。この場合、B子さんは斜めにA君に近づいてくるので距離、時間ともに2/3に節約される。6角関係の場合はθ=60°となり、この場合、B子さんは斜めに遠ざかっていくので距離、時間ともに2倍必要となる。

θ=180°の場合はどういうケースか。これは相思相愛のケースである。相思相愛のA君とB子さんはお互いに向かって歩き出す。この場合は距離、時間ともに1/2に節約され、この場合が最短となる。

θ=0°の場合がもっとも悲劇である。B子さんはA君が嫌いなのでA君と逆の方向に逃げて行こうとする。二人は同じ速度なのでA君はB子さんに永遠に到達できない。

もっと大勢、例えば50人のクラス全員(男女25名づつ)のスパイラルを考えたらどうなるか。この場合、50角形となるので、θ=7.2°のゆっくりとしたペースで全員が中心に向かっていく。実際に計算してみると、Lo=10mの場合、全員が中心に集うまで約1.3kmを約21分かけて何周も歩き続けることになる。

真の大きさとは

見慣れた世界地図。

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これはメルカトル図法によるものなので面積は正しくない。赤道から遠ざかる、つまり北極・南極に近づくにしたがって本来の大きさよりもずっと大きく見えてしまうという欠点がある。では実際の大きさはどうなのかを知りたくなる。そこで各国の本当の大きさを直感的に教えてくれる便利なサイトがある。

thetruesize.com


これを使って主要各国を赤道上に並べてみる。

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左から、イギリス、フランス、インド、中国、ロシア、日本、オーストラリア、カナダ、アメリカ、アルゼンチン、グリーンランド、である。こうしてみると意外な発見がある。

ヨーロッパ各国はもともとそれほど大くないのだがそれはさらに小さくなって、なかでも比較的大きく思えたスウェーデンですら実際は日本よりも小さい。そしてアジア圏、ロシアは広大で中国のゆうに5倍くらいはあると思っていたが実際は1.5倍程度の差しかない。その中国も実はオーストラリアと同じくらいの大きさである。そして広大に思えたカナダも実際はそれと同じくらいである。アメリカと南アメリカ大陸の比較が印象的である。アメリカはブラジルとほぼ同じ大きさ、そして南大陸の中にすっぽりと入る程度の大きさでしかない。そして一番右のグリーンランド。地図上は日本の数倍の大きさにみえていたが実際は大きさという意味では日本と同じくらいであった。

こうしてみると実は日本は言われているほど、思われているほど小さくはないのであった。

最後に、いつも地図の一番下に鎮座する禁断の氷原大陸、南極を赤道上、太平洋のど真ん中においてみる。

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なんとも手頃なサイズである。各国から愛される存在になるに違いない。

 

『賢者の贈り物』(オー・ヘンリー)

オー・ヘンリーO. Henry)の『賢者の贈り物』の冒頭はこういう書き出しである。

1ドル87セント。それだけだ。しかもそのうち60セントは1セント銅貨である。デラはそれを3度数えなおした。明日はクリスマスだというのに。


『賢者の贈り物』はつつましやかに暮らす若い夫婦の皮肉ではあるが心温まるストーリーである。これが書かれたのは1905年であるがこの1ドル87セントが今のどの程度の価値があるか調べた人がいる。

crd.ndl.go.jp

 

これによると1.87ドルは今の3円程度。つまりほとんど持っていないに等しいということである。60枚の1セント硬貨というのは厳しい生活費のやりくりの中で少しずつためていたことをうかがわせる。

さて、最初にこの小説を読んだ時からこの記述には大きな疑問を持っていた。

・87セントの中で1セントが60枚だからそれを差し引くと27セント。
・アメリカの硬貨は1セント、5セント、10セント、25セント。
・1セントを除くと、5セント、10セント、25セントの3つ。これらはすべて5の倍数なのでどのように組み合わせても27セントにはならない。

私はこれをオー・ヘンリーという小説家が算数は苦手だったからこの間違いに気が付かなかったのだろうと思っていた。しかし、最近、次のような事実に遭遇した。19世紀後半にはアメリカで3セント硬貨が存在していた、というのである。

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この硬貨は1866年鋳造なので、おそらくこの作品がかかれた1905年まで流通していたであろう。これによれば27セントは、「3セント硬貨が4枚+10セント硬貨1枚+5セント硬貨1枚」という組み合わせで実現可能である。この小説を初めて読んでからずっとオー・ヘンリーという人を誤解してきたことになる。大変申し訳ない気分である。

妻のデラは夫へのクリスマスプレゼントを買うためにとある決意をする。一方で夫も同じようにある決意を秘めて妻へのプレゼントを準備した。さて、二人がプレゼントを交換してみるとそこには皮肉な結末が待っていた。しかし、それはヘンリーが賢者の贈り物、と繰り返し呼んでいるとおり、クリスマスにふさわしい温かな結末でもあった。

冒頭のつまらない疑問が払拭された今、クリスマスの時期が来たら気を取り直して『賢者の贈り物』をもう一度読み返してみたいと思う。

オールド・チェシャ―・チーズ(Ye Olde Cheshire Cheeze)

シャーロック・ホームズSherlock Holmes)シリーズの傑作『赤毛組合(The Red-Headed League)』にはこんな記述がある。

そこからちょっと歩いたところが、サックス・コーバーグ・スクエア、朝方聞かされた奇怪な事件の現場である。狭く苦しくちっぽけな、落ちぶれながらも必死に見栄を張っているといった感じの場所ですすぼけた2階建ての煉瓦造りの家並みが柵を巡らせた小さな空き地を四方から取り囲んでいる。わが赤毛依頼人が質屋を営んでいるのはこの家だと知れる。ホームズはその店の前で立ち止まると首をかしげ細めたまぶたの間から目をきらちと光らせては、周囲をひとわたり見渡した。それから鋭い目をじっと家並みにそそぎつつゆっくりと通りを角まで歩いていきまた引き返してきた。最後に質屋の前にもどると持っていたステッキで2,3度勢いよくたたいてみてから店のドアにもどってノックした。


この作品の舞台はロンドンのフリート街(Fleet Street)。

 

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ここには「ジ・オールド・チェシャ―・チーズ(Ye Olde Cheshire Cheeze)」という名前の歴史のあるパブがある。

 

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開店は1667年、ロンドンの大火が1666年なのでその翌年である。再建と書かれているので実際の創業はもっと古いのだろう。

 

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創業以来からの国王の堂々たるリスト。チャールズ2世の御代から始まり絢爛たるジョージ王朝時代を経て、現代に至る。もちろん現在は、エリザベス2世。

 

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この店にはホームズの生みの親である作家のコナン・ドイル(Conan Doyle)も通っていたという。地下は2階まであり穴蔵的なムードがいい。ここで定番のFish&Chipsを注文。

 

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ビールはもちろん、サミュエル・スミス。こちらもヨークシャー生まれの地ビールで創業1758年の老舗である。

 

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さらに地下2階に進む。穴蔵ムードはさらに高まる。

 

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ホームズがこの通りに現れて、店の前でステッキで地面をたたいたのは、地下に掘り進められていた銀行強盗のためのトンネルの進行具合を確かめるためだった。ドイルもこの穴蔵のようなパブでビールを飲みながらホームズ物の小説の構想を練っていたに違いない。

 

円形計算尺

これは円形の計算尺、つまり計算機である。

 

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両面あってそれぞれ機能は異なるが、こちらの面を使ってできる計算の例を下記に紹介する。

 

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すさまじいほどの威力を発揮する。電池が入っているわけではないのに。