★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

昨日の友は今日の敵

とある地方の町で私はある人と夕食を一緒にすることになっていた。待ち合わせの時間まで少し間があったので駅前のカフェで時間をつぶすことにした。

いつものようにアメリカンコーヒーを注文して奥の喫煙室に向かう。扉を開けて灰皿を手に椅子に座って煙草に火をつけようとしたその時、胸騒ぎのようなものに襲われた。いつもと何かが違う、と。それは、目の前のこの表示であった。

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しばらく見ているうちにその言わんとすることが理解できた。ここは何でもいい喫煙室ではない。ここは電子タバコ専用の喫煙所であり、紙タバコは禁止である。そして周りを見渡すと確かに奥にもう一つ扉があり、そこには紙タバコが吸えるという表示がある。

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なるほど。ご丁寧に喫煙所も2つの部屋に区切られているのである。私はさらに奥の部屋に入りすごすごと紙タバコを吸った。よくみるとこの部屋には電子タバコ禁止の表示はない。電子タバコはどちらでの部屋で吸っても構わないのである。紙タバコ族だけがさらに一段奥に追いやられたということである。電子タバコとの差を見せつけられた気がした。

かって紙タバコだけの時代から電子タバコが登場し、今のところ喫煙所で一緒に共存している。今後電子タバコが普及していくと電子タバコしか知らず、さらに紙タバコの煙が嫌いな世代が登場してだんだん勢力を拡大してくるだろう。そして彼らはどちらかというと禁煙席側と友好関係を持つのではないか、そちらと連携して紙タバコ族と対立してくるのではないか、そんな不安が脳裏をかすめた。

ただこのカフェのようにふんだんに部屋を設けられるのは地方都市ならではの事情であり、都心部はまだまだ難しいに違いない、と負け惜しみのように思った。

 

朝の生まれる場所

前回、昼と夜の境界線について考察した。

taamori1229.hatenablog.com


その結果、メルカトル図法上の境界線は、

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で表されることを示した。ここで、θは公転面に対すると地球の地軸の傾きであり、1年間を通して、夏至時:66.6°、冬至時:112.3°、春秋の彼岸時:90°と変動する。XZはメルカトル地図上での座標でありそれぞれ経度方向、緯度方向に対応する。

ここで昼夜の境界線の傾き、つまり日の出の線の角度をψとすると、 

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となる。右辺をさらに計算すると、

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ここでZ座標の緯度φによる表現である、

 

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を用いてXを消去した。+と-の2つの解があるのは夜→昼、昼→夜の2つの場合に対応している。そして一般に日の出線と日の入り線は傾きが異なることがこれからわかる。

以上より、 次の3つの角度、

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について、 

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という美しい関係式が成立する。

この関係式用いることで日本列島においてある季節にどの場所から朝、夜が始まるかを調べることができる。日本列島の地図と東西南北の最先端地の緯度、経度情報を以下に示す。

 

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①日本の主な都市である、札幌、東京、鹿児島、那覇の日の出線の傾き(ψ)の年間変動と②朝、夜がもっともはやく訪れる場所を整理したものを下表に示す。

 

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日の出線の傾き(ψ)については札幌、沖縄の間でも差は1.6°程度なので、日の出線は日本を通過するときほぼ直線であると考えてよい。つまり東京を代表と考えていいということである。東京における日の出線の傾きを用いて日本地図上で朝・夜の訪れる時間を作図してみた。

その結果、全国で見たとき、朝・夜は最東端の南鳥島に最もはやく訪れると思われがちであるが、最北端の択捉島の方が早くなる場合がある。それは①夏至の日の出、②冬至の日の入である。

4島だけを考えると朝・夜は最東の北海道でもっとも早く訪れると思われがちだが、千葉の房総半島が早い場合がある。それは①夏至の日の入、②冬至の日の出である。よって、新年の初日の出を誰よりも早く見たいという人は北海道ではなく、千葉房総半島に向かうべき、ということ。また、同じ作図の中で冬の時期、札幌と那覇の日の出の時刻はほぼ同時刻であることも判明している。

昭和秘密基地(後編)

伊豆高原の一角で秘密の基地が建設されているという噂を耳にしてやってきた。

 

taamori1229.hatenablog.com

後編である。

 

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つげ義春風の標識に従って。

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迷路はどこまでも続く。

 

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なぜここまでに論評を拒絶するのか。

 

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撮ってきた写真を整理しているとどこが上なのか不明、あるいはどれでもいい、というのが多い。超無重力空間と言えよう。

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突然、研究所の看板が。

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ここが研究室か。

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笑わせたいのか、驚かせたいのか、怖がらせたいのか、教えたいのか。
どれでもないような気がする。

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突然の聖徳太子像。大きさは世界最大とのこと。追随者は誰もいないだろう。

 

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そして金剛力士像。

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ティワナク遺跡の石像。勿論、レプリカ。

 

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モアイ像が聖徳太子を見下ろしていた。

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また、新しい研究所が。

 

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民俗学研究か。ここは案外まともかもしれない。

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よく見るとそうでもなくやはり壊れている。

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ここが迷宮への入り口。ここ全体は元熱帯植物園を改造したもの。

 

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135号線から見える看板。ほぼ崩壊状態。

 

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ステージの上で旗を振っているのは、セーラちゃん。恐らくこの秘密基地を企画・建設した張本人。正体は不明。

 

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カメラを向けるとポーズ。話をしてみるといたってまじめに取り組むおじさん。決してブレていない。

maboroshi.pandora.nu

 

帰りの電車。
伊豆伊東の海の青さがその日見た一連の悪夢を洗い流してくれるような気がした。

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高湯温泉郷

週末を利用して福島市の高湯温泉を訪れた。

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駅から磐梯吾妻山系に向かって路線バスは険しい山道をゆっくりと登っていく。30分ほどで高湯温泉郷に到着。あたりには硫黄の匂いが立ち込める。湯は乳濁質。源泉に近づくと生命の危険あり、という立て札あり。

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創業400年の老舗旅館。現在は17代目だとか。

 

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裏手には立派な薬師堂。

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そして昔懐かしい囲炉裏が迎えてくれる。炭火が優しく温かい。

 

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さてこの由緒正しい旅館に集まってきたのは10名の男たち。到着してすぐに浴衣に着替え、始めたのは部屋での酒盛り。まるで手品のように登場する酒瓶とつまみ。夕食はもちろん正規の酒盛り。終わって部屋に帰るとまた部屋で酒盛り。限界がきて眠くなったものから倒れて布団に入っていくというデス・マッチが深夜まで繰り広げられた。

天罰が下ったのであろう翌朝、外は大雪。

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そして朝から始めたのはやはり部屋で酒盛り。そして露天風呂での雪見酒。さすが会津小原庄助さんの末裔たちだけのことはある。

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やがて男たちは別れを惜しみながら解散。再会を期してそれぞれのいつもの生活に戻っていった。雪の山道を下って福島市内まで戻ってくると、昨日のことがまるで嘘のように穏やかでさわやかな秋が待っていた。

 

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図書館幻想

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その重い扉を開けると薄暗くほこりっぽい館内には果てしなくもなく書架の森が広がっていた。

 


▮第1の森

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左右には高い木が立ち並び小径はやがて狭まって途切れがちな抜け道となっている。それは複雑に入り組んだ草深い道で、草々が両側から触手を伸ばし閉じ込めようとする。旅人はふと道に迷うことを怖れる。そこで近代知の巨人の声を聞く。「森で迷ったときの最もそとに出る近道はひたすらまっすぐ歩いていくことだ。途中で左右へと延びる道がお前を幻惑するだろう。それでも迷わずにまっすぐに歩いていくことだ」

 


 
▮第2の森

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木々の隙間からすれ違うように人影が見え隠れしている。それは寂しげな黒衣の人たちの葬送の列である。旅人は進路を変えてそちらに合流しようとして道ならぬ道を進む。やがて明るい小径に出たときにはすでに葬列は通り過ぎた後で、そこには墓標だけが果てしなく連なっている。ふと生暖かい風が通り過ぎていく。一人残された旅人は累々たる墓標をめぐって各々の墓誌に刻まれている記憶を一つ一つひも解いていく。

 



▮第3の森

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旅人は深く茂った葉の葉擦れの音に無数の人たちの声を聴いた。そこは原生林とは違う然とした秩序に支配されている。時折吹き寄せる風に木々はひとたびは撹乱されるが、やがて静寂が訪れてふと見上げると一段と高度に組織化されている。ここに通底する秩序らしきものの正体は紛れもなく「約束」である。人々の声が怒号へと変わる。生まれ変わるための陣痛のように。

 



▮第4の森

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旅人は1本の樹を見上げる。それは我々を荒野に放擲した禁断の真紅の果実をつけている。大きく時を隔てて、とある人物がこの果実が地面に落下するのを目撃した。そして、大地と木の実の間、そして万物の間に存在する物の摂理を理解した。その瞬間、我々の永い放浪は終わりをつげ、それまで畏怖と脅威の対象でしかなかったこの森と真っ向から対峙する時代を迎えた。我々の関心はさらに無辺の宇宙、矮小な粒子の世界へと広がり続けているが、この深遠な森はその全貌をいまだに明らかにしてはくれない。

 



▮第5の森

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森全体とそれを構成する樹木には古代建造物にも似たシンメトリーが施されている。木の枝、葉たちが織り成すタペストリーには無駄やむらがない。採光も巧妙かつ最適に設計されている。旅人は木の幹を指で触れてみる。どこまでも無機質で生気が感じとれない。この森に充満しているのは調和とそしてそれがゆえの空虚さである。

 



▮第6の森

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この森を支配しているのは目的という言葉。木々は同じ方向を向いてともに活動し、毛根から葉脈にいたるまで常に何かを生み出そうと熱気に満ちあふれている。遠くから生産にあずかる人々の明るい声が聞こえている。これらが向かう先にあるのは幸福な未来。そしてそれは繰り返しをいとわない明快さと単純さで森の地下に潜む底知れない深淵をひたすら隠し通そうとしている。 



▮第7の森

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この森の奥深くには美をつかさどる麗しい女王が君臨しているという。その威光からかここの木々、大地、空はすべて生き生きと脈動してまるで熱帯雨林のようにその生命力を直接訴えかけてくる。そこには表現という気迫で満ち満ちていて足を踏み入れたもの達を空間的、時間的に幽閉してしまう。旅人は女王を一目みたいと願う。しかしその真の姿をみたものは一人もいない。

 



▮第8の森

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旅人が草むらに足を踏み入れた途端、色鮮やかな蝶の大群が一斉に宙に舞いあがる。それは空を覆うような大きな波となったあとゆっくりと雨のように森全体へと降り注ぐ。そして蝶たちは迷うことなく定められた枝葉を探り当ててそこに収まっていく。静まり返った森には翅を休めた蝶たちが自己主張をするでもなく詩人たちによって摘み取られるのを息を潜めて待ち続けている。

 


 
▮第9の森

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ここは広大で豊饒な森。草花は美しく咲き誇り、大地は起伏に富んでいる。森全体は光に満ちあふれて、鳥たちの声はまるで詩のように響き渡る。うっそうと茂った森の奥に一箇所だけ明るい舞台がありそこに一人の少女が番人として立っている。少女は旅人たちに手を差し伸べて一本の鍵を渡す。受け取った瞬間、少女の姿は消えてそこは断崖が広がる。旅人はその眼下に滔々と流れる大河と、対岸からまた果てしなく続く森が空へと続く山脈にまで連なっているのを見る。

 



▮第0の森

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最後の森にたどり着く。小川が弧を描いて流れていて、それをたどっていくと再び元の場所に戻る。この小川はこの森を囲んで無限に流れているのである。「私は道標」という声を聞く。9つの森の中心にこの森があると信じられてきたが実は9つの森全体を取り囲んでいることにここで気づく。ここは終着点であると同時に出発地点。そこで旅人はこの世のあらゆるものが一斉に反転する錯覚に陥る。

 

 

我に返ると私は再びこの広大な書架の森の扉の前に立っていた。  

 

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血液型の数理(分析編)

現在の日本人の血液型の分布は次の図の通りである。

 

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A、O、B、ABの比率はおおまかに4:3:2:1と覚えるとわかりやすい。血液型の遺伝メカニズムから考えてみると、O型が意外に多いのはなぜか、A型とB型で2倍もの差がつくのはなぜか、などが不思議に思える。

前回記事で行列を用いた解析手法について説明した。

 

taamori1229.hatenablog.com

世代交代による血液型分布の変化は次の漸化式に基づいている。

 

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本式を用いて最初の3世代分を書き出してみる。

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第4世代以降も同様の式で表せる。上の式はx(2)はx(1)(つまり初期値)の2次式となっている。下の式に上の式を代入すると、

 

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x(1)の4次式となり式の複雑さは増大する。X(4)などは考えたくもない。これを繰り返していくと、 

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となり、x(1)の2^n次式(10世代目は512乗)となって手に負えないように思える。しかし血液型行列Bには計算を容易にする以下ような便利な特徴がある。

すでに前回記事でこの血液型行列Bijkについては、2つの規則があることを説明した。

(1)人口保存則

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(2)夫婦交換則

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これらに加えて血液型行列はその最大の特徴である次の関係式が成立する。

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これの説明は難しい。しかしこれを実際に使って再度x(3)を計算してみると、

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となり、x(2)から変化しないことがわかる。同様にして計算を繰り返すと結果的に、

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のように2通りの値しかとらないことが分かる。

血液型は初期の分布でほぼ決定される。一度は世代交代して初期の分布とは異なる分布になるがその後は何世代交代してもそこから分布は変化しない。つまり血液型の分布は未来永劫安定であることになる。この様子をグラフにて示す。

まずは血液型6タイプ版。20世代分計算してみた。

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続いて同じデータに基づく血液型4タイプ版である。

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実際に初期値がなんだったのかはわからない。ここでは現在の日本人の分布状態にできるだけ一致するように適当に調整してみた。グラフのとおり、最初に一度だけ変化するがその後はずっと変化しない。これ以降、何百世代繰り返してもそのままである。

血液型システムは非常に安定的であると言える。初期値を変えて試してみるとほぼ任意の分布で安定させることができそうに思える。

初期値次第で決まって変化がない、というのはあまり面白くないので一つ仮説を立ててみた。このシミュレーションの条件として各々の血液型には有意差がないとしたが、こんな記事を見つけた。

 

kotobank.jp


詳しいことはわからないが、妻がO型で子供がA型、B型の場合の組み合わせ特有の事情らしい。これに限定するわけではないがこのような血液型の組み合わせ特有の事情というのがあった場合それが血液型の分布にどういう影響を与えるかを考えてみる。

この不適合の場合を例にとると、血液型行列の要素の中で対応する個所として、

 

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オレンジ色の部分を多少調節してみてシミュレーションを実行した。実際には「-3%」とした。この操作によってこの行列は血液型行列ではなくなり、世代交代のたびに分布は変化することになる。

まず、血液型6タイプとしては、 

 

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血液型4タイプでみると、

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という結果が得られた。今回の問題の組み合わせの子供:A型、B型とそれに間接的に影響を受けるAB型についてはゆるやかに割合が減少していく。これにより影響を受けないO型の割合が増えていくのである。

現在、日本人ではO型の割合がB型よりも多い。他の国には人口のほとんどがO型というところもあるらしい。このような血液型の特定の組み合わせによる小さな影響が何世代にもわたって影響を及ぼしている可能性はあると思う。そしてこの事情が国や地域ごとに異なることで最終的に異なる血液型分布となっていると考えられる。

またもうひとつの疑問であったA型、B型の割合の差(A型がB型の2倍)についてであるが、上のシミュレーションではある仮説に基づいてちょっとした細工を施している。それはA型、B型の初期値をほんの少しだけ差をもたせたのである(±0.2%)。グラフを見てみると世代を追うごとにA型、B型の差は広がっていくのが分かる。あと100世代も進めば差は圧倒的に広がるだろう。これは初期値のほんのわずかな差が「2^n次式」という非線形の複雑さを受けてその影響が世代を超えてじわじわと拡大、表面化してくるのである。

 

血液型の数理(準備編)

血液型の分布とその変化について数学的に分析してみる。
数学モデルとして次を仮定する。

(1)血液型はO,AB,AA,AO,BB,BOの6タイプを対象とする。
(2) 血液型の割合は男女とも同一である。
(3) 結婚は血液型を問わずランダムに行われる。
(4)一組の夫婦は二人の子供を作ったのち消滅する。
(5)世代交代は全世帯同時に行われ、総人口は一定である。
(6)6つの血液型に有意差はないものとする。

数学的な表現方法としては行列を用いることとする。血液型行列として下記Bを定義する。 

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ここで、3つの添え字i、j、kの意味は、 

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とし、行列値Bijkは、 

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を示すものとする。普通の行列とは違って3次元形式である。この行列の特有の性質としては、次の2つである。

(1) 人口保存則

 任意のj,kに対して、

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子供は必ず6通りのどれかに属することによる。これにより人口は保存される。また夫婦が対等な関係にあることから、

(2) 夫婦交換則
 任意のiに対して、

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という夫婦交換の法則が成り立つ。

世代における血液型分布状態を下記で定義する。

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ここでx1~x6は各血液型(順にO、AB、AA、AO、BB、BO)の分布をしめしており、     

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が成り立つ。以上を用いた血液型分布の1世代交代の漸化式は、

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で与えられる。これが世代交代を分析するために重要な式である。やや複雑な形をしているが、特に問題となるのは右辺がxの2次の形式となっていることである。これは血液型の分布の推移がすべての血液型の分布に影響されることによる効果である。この非線形性により分布の推移は複雑化することが予想される。

この漸化式が血液型の分布状態を保存することを確認する。

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 途中で人口保存則、夫婦交換則を適用した。

参考まで、血液型行列Bの具体的な形を以下に示す。3次元なので通常の6x6行列が6つ並ぶ構成である。この表現の中で人口保存則は同じ行・列にある値6個を足すとすべて1になることに対応する。また夫婦保存則はすべての行列が行と列を入れ替えても不変であること、いわゆる対称行列であることに対応する。

 

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この行列表現を使って血型の推移について分析した結果を次回以降報告する。血液型の分布はどのように世代で変化していく性質のものか、現在の日本人の血液型の分布である「A型:37%、O型:32%、B型:22%、AB型:9%」とはどう解釈されるか、そして人類創世期における血液型の分布はどうだったか、などを究明することが目的である。