★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

ギターチューナー最終進化形

ギターの弦を調律するためのチューナーであるが、最近購入した最新型のタイプがこれである。

 

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アコースティックギター専用。ホールを利用して固定する。もう少し拡大すると、

 

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この1から6の赤色ランプは弦を鳴らすと自動的に識別してどの弦かを表示する。写真は第5弦を鳴らしたとき。緑色ランプは音程がぴったりであるという意味で、左右の▶の黄色ランプは音程が高すぎ、低すぎを示す。写真はちょっと低すぎなのでちょっと音程を上げなさい、を示している。肝心のチューニング精度は申し分なし、本体はホールの中に隠れて演奏ときも邪魔にならない。そして電池式で軽量である。値段も1,200円程度と手ごろ。

 

これまでのチューナーと言えば、

 

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という机に置くタイプとか、もう少し小さいものでは、

 

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ヘッドに装着するタイプなどであったがいずれにしても、使い終わったら取り外す必要があった。今回の最新鋭機はつけたままでもギータケースに収納可能である。

これ以外の形、これ以外の大きさはありえない、もう進化する余地のない究極のギターチューナーであると思う。改良の余地があるとしたらあとは太陽電池動作にするくらいである。

 

昭和秘密基地(前編)

伊豆高原の一角で秘密の基地が建設されているという噂を耳にしてやってきた。基地の全容はこんな感じである。幹線道路沿いに堂々とあって車からもよく見える。全然、秘密ではない。

 

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基地の内部の様子はというと、

 

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特に解説できるものはない。そもそも理解できていないのである。

人間にはモノを見た時そこに意味とかストーリーとかを考えたり想像せずにはいられない習性がある。しかしそれにもおのずと限度がある。ここまで理解不能だと想像の翼は伸びきったゴムのように弛緩して、逆にドーパミンよろしく奇妙な高揚感、浮遊感が支配的となる。畳み込むような波状攻撃に思考能力は停止して、心なしか足取りが軽くなる。無意識に早くここから逃げ出したがっているのだろう。しかしこれはまだ序の口、この秘密基地の正体はこんなものではなかった。迷宮はどこまでも深く、想像を絶するカオスが私を待ち構えていたのだがそれはまた後編にて。

会津郷土料理・つゆじ

故郷に帰ったときに母がいつでも作ってくれた料理に「つゆじ」というのがある。福島県会津地方の郷土料理で、誰かに作り方を教えてもらったのだと話していた。 

japan-word.com

たいへん素朴な料理ながらなかなか奥深い味わいだった。母が亡くなってから当然誰も作る人がいないので帰省したときも非常にもの寂しい気分を味わっていたが、先日古本屋でこういう本を見つけた。

 

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「つゆじ」という名前ではなかったが「こづゆ」という名前で非常によく似ているものを見つけた。完成イメージ写真はこれである。

 

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小さめの浅いお椀(理想は会津塗)で出される。何杯もおかわりするのが正しいいただき方らしい。また本によるとこの料理は冠婚葬祭や祝い日に出されるもので、酒の肴の位置づけらしい。だいぶイメージが違っていた。ちなみにレシピはこれである。

 

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素材としてスーパースターがいない。これをみただけで非常に素朴な料理であることが分かるだろう。これを参考にするとともに記憶を紐解いて「つゆじ」作りにチャレンジした。

貝柱は3個とあるが、記憶ではかなりの量が入っていた。もう少し多めにしようと思って乾物屋に行ってホタテの貝柱を探した。

 

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驚いたことに70gでも2,000円ほどする高級食材である。1つでは足りない気もしたが2つ買う勇気も起きなかった。

豆腐は普通の豆腐ではなかった。ネットで調べてみると「つと豆腐」であることが分かった。

www.zouni.jp

これを作るのには藁(わら)でくるむ必要があるのだが入手が難しいので簀の子(すのこ)で代用した。

 

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豆腐を簀の子でくるみ、ひもで強く縛る。そして塩を入れた鍋で20分ほど煮込んで「つと豆腐」の出来上がりである。これは思いの他うまくできた。

こうして完成した「つゆじ」がこれである。

 

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レシピにも「青味(季節のもの)」とあったのでさやいんげんを購入していたのだが入れるのを忘れてしまった。緑色がないと彩りとして少し寂しい。

味はどうかというと、かなり近いところまで来ているのだがやはりどこか違って物足りない。何杯もお代わりしようという気までは起こらない。その違いは何なのを考えていたのだが結論としてこの位でちょうどいいかもしれないと思った。これから先も折に触れて「つゆじ」作りにチャレンジしていきたいと思うが「やっぱりどこか違うなあ」を言い続けていくのも悪くない、とあらためて思ったということである。

 

ビュフォンの吸殻

側溝に吸殻を捨ててはいけない。

browncapuchin.hatenablog.com

 側溝には普通、等間隔で平行な金属製の仕切りが入っている。

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吸殻を側溝に向けて投げると仕切りに当たって跳ね返りうまく入らない時もある。しかし、側溝の仕切りに触れることもなく吸い込まれていくのを見るとバスケのきれいなシュートが決まったときのような清々しい気分になるのも正直なところである。

この確率を計算してみる。

 

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吸殻の長さをa、仕切りの間隔をLとする。吸殻は側溝に対して垂直な方向から回転することなく任意の体勢のまま到達するものとする。

その体勢を決めるパラメータは、吸殻の重心と仕切りの距離x、水平角度θ、垂直角度φの3つである。

xは仕切りの近い方との距離と定義してx:0~L/2とする。また、θ、φは簡単のために0~π/2の範囲で考える。

xに関する確率の要素は、

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θφに関する確率要素は、それぞれ、

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となり、全体としての確率要素dPは、

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となる。これを吸殻が仕切りと交差する条件で積分することで仕切りと衝突する確率Pが求められる。ここで仕切りと衝突する条件は、

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となるので衝突する確率Pを計算すると、

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が得られる。具体的に数値計算してみる。a=3cm、L=4cmの場合の衝突確率は、

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となり、これより3回に2回程度は清々しい気分になれることが分かる。

ちなみに、これの2次元のケースは「ビュフォンの針」と言われる話題である。その結果によれば、2次元で仕切りに衝突する確率Pbは、

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で与えられる。確率に「円周率:π」が登場することで有名である。試行を多数繰り返すことでπの近似値が求められる。

今回の議論はこれの3次元への拡張である。得られた結果Pを2次元の場合の衝突確率Pbと比較してみると、

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となり、2/π(約2/3)だけ衝突確率が減ることがわかる。これは3次元の世界では吸殻が斜めに到達することで見かけ上、水平方向の長さ成分が減ることによる効果である。


いずれにしても吸殻を側溝に捨てることはよくないのでやめましょう。

 

皿みそ

 徒然草の第215段にこんなエピソードがある。

平宣時朝臣が、年老いて後、昔語りに、「最明寺入道(五代執権北条時頼)が、ある宵の間にお呼びになる事があったので、「すぐに」と申しながら、しかるべき直垂がなくてあれこれしている間に、また使いが来て、「直垂などがございませんのですか。夜であるのでどんな格好でも構いません。すぐに」とあったので、よれよれの直垂を着て、普段着のままで参上した所、銚子に素焼きの器を添えて持って出て、『この酒を独りでいただくのが物足りないので、来てくださいと申上げたのです。肴が無いのですが、人が寝静まっています。肴になるような物はないか、どこまでも探してみてください」とあったので、脂燭をさして、すみずみまで探し求めるうちに、台所の棚に、小さな素焼きの器に味噌が少しついたのを見つけて、『これぞ見つけ出しました』と申し上げた所、『十分です」といって、こころよく何杯も酌み交わして、上機嫌になられた。その時代は、万事こんなふうでございました」と申された。

 

 友人とどうしても酒を酌み交わしたい夜がある。早く来てほしいと使いの者をなんども差し向けて催促する。恰好など気にしないでいいから、という。位の高い人であるのに、寝静まった家人を起こすにも忍びないので、酒の肴をこっそりと台所で探し回る。そこで皿にちょっとした味噌が残っているのをみつけてそれだけで二人で夜遅くまで酒を酌み交わす。

 

 これを名付けて皿みそ、酒飲みの極意と美学がすべてここに凝縮されている。

 

 先日ちょっとしためでたいことがあり、古い友人にそれを手紙で伝えたところ、これがお祝いの品として送り届けられた。

 

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 かつては恋敵でもあったその友人のことを思い出しながら一人で酒をたしなんだ。肴は皿にもったお祝いの味噌だけである。外は季節外れの雨が音もなく蕭蕭と降っている。一人思い出にひたるにはまさにうってつけの秋の夜であった。

 

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切符は正しく目的地まで買いましょう

 仕事柄、東北新幹線を利用して仙台に出張することが多い。仙台駅から戻る時は東京駅まで新幹線を利用して、そこから会社のある横浜まで東海道線に乗り換える。

 これに関連する首都圏の路線図を下図に示す。 


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 かねてから謎だったことがある。それはこの乗車運賃がどうも毎回一定でないことであった。仙台駅では新幹線の切符をいつも窓口ではなく、機械で購入するので乗車券の横浜駅の名前を入力するのが面倒である。だから急いでいる時などはとりあえず東京駅までで購入しておき、実際には横浜で降りるときに清算しようとする。きっとそれが運賃が毎回同じにならない理由であろうことは察しがついていた。

 あらためて調べてみると、どうも特定都区市内規定というのが、その秘密を握っていることが分かった。

■特定都区市内規定(JR旅客営業取扱基準規程86条、87条)

「特定都区市内にある駅」から「その特定都区市内の中心駅から200kmを超える鉄道区間内にある駅」までの運賃計算に用いる営業キロ(または運賃計算キロ)の起点(または終点)を当該中心駅とみなす。

 これは歴史的には大都市における改札業務を簡素化するために設けられたものである。平たく言うと仙台のような遠いところから東京に来る場合は23区内にある駅までの運賃は全部一律にしてしまおうというものである。

 特定都区市内として規定されているのは、全国に11都市ある。その中でも今回の議論に関係してくるのは東京都区内横浜市の2つである。この二つエリアは上の図に示したように隣接している。それが事情をさらに複雑なものにしている。

 中心の駅をベースに考えるということなので、上の図を見るように東京都区内ならば東京駅、横浜市内ならば横浜駅を選び、仙台からそこまで距離から運賃を算出する。そしてその料金をこのエリア内のすべての駅に一律に適用するのである。すると当然、エリア内で仙台からみて遠い場所にある駅はお得で、逆に近い駅はなんとなく損をしたような気分になるのが人情というものだろう。例えば、東京都区内ならば南北の端にある赤羽駅蒲田駅は30kmも離れているのに同じ運賃になるからである。仙台から見たら350km程度も離れているのだからどちらも同じ程度と考えてもいいだろう。それがこの料金体系の論拠ではあるのだが。

 でも例えば川崎駅は横浜市内エリアの東京よりの端にある。となりの蒲田駅までは東京駅と同じ料金でこれるのに、一駅を越しただけで横浜駅までの運賃になるのはおかしい、と思うかもしれない。実際に二通りの運賃を計算してみると、

 ①仙台から横浜市内エリアまでの均一運賃を払う・・・¥6,480

 ②仙台から東京都区内エリアの均一運賃を払って蒲田駅まで行く。
  そして蒲田駅から一駅区間分だけ追加で支払う・・・¥6,100

 と約400円近い差が生じる。さてこの事情をエリアを広げてグラフとして示す。

 

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  目的地までの運賃を払った場合を赤丸、そこから追加で運賃を払った場合を黒丸で示している。またいくつかの駅からのそれぞれの追加運賃を加えた額をグラフで表している。この絵のとおり、東京都区内の切符を買って一番遠くまでいける駅である蒲田駅から追加料金を払うのが一番割安になることが分かる。

 

 さて、この方法で横浜まで行ってみると計算上は300円ほど割安になるはずであった。実際に横浜駅で乗り越しの清算を精算機でやってみると機械に表示された質問に慄然とした。

「あなたの乗り越し区間蒲田駅から横浜駅でいいですか?よければ『はい』のボタンを押してください。そうでないならば駅員にコンタクトしてください。」 

 ひっかけ問題のように知っているくせに聞いてくることに不安を感じた。確かにこちらとしては蒲田駅とは縁もゆかりもない。元々蒲田駅になんの用事があったか?にこたえられない。なぜ乗り越しすることになったのか?に対しても同様である。そういわれて考えると経路探索のツールを使ってもこういう方法が最安値で検索できたこともない。またそういえば窓口で「切符は正しく目的地まで買いましょう」というポスターも見たことがある。そんなことを考えているうちに機械の前で動けなくなり、呆然と立ち尽くしたのであった。

 

 この記事はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

京都鉄道博物館

 19世紀末のアメリカでは鉄道網の建設が急ピッチで進められ、それが間もなく完成しようとしていた。そんな時代の話である。そこに鉄道関係者にとっては不穏なニュースが流れる。それはベルの発明した電話による全米電話網の整備開始のニュースである。鉄道関係者は危惧する。もしも遠距離の電話でリアルタイムに話ができるようになるとそれで用件は済んでしまうだろう。あえて時間のかかる鉄道を利用する必要はなくなる。乗客は大きく減ってしまうのではないか、と。そして戦々恐々としながら事態を見守った。

 ところがそれは杞憂に終わった。ふたを開けてみると鉄道の乗客は逆に増えたのである。それはなぜか。

 それは、電話網が整備されたことで実際に赴いて会える約束を取り交わせるようになったからである。それまでは誰かに会うにしても事前に約束はできず、鉄道を使って実際に行ってみるしかなかった。当然、相手は不在のこともある、忙しくて会えないこともある。それが鉄道を利用しようと決意するときの足かせになっていた。電話網が整備されたことでそれがなくなった。出発する前にちゃんと会える確約がとれるようになったのである。

 こうして考えてみると、人というのは常に相手に「会いたい」生き物なのだ。その後、電話網はさらに急速な発展を遂げ、スマートホン、インターネットの時代を迎えている。今、相手がどこで何をして何を考えているかいつでも手に取るようにわかるようになった。それでも人の本当は実際に「会いたい」という欲求はむかしも今もそしてこれからもきっと変わらないだろう。

 そして鉄道はたくさんの人々のそんな「会いたい」を今日も運んでいる。

 

www.kyotorailwaymuseum.jp

 

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